
タイのSNSで、いま「ひらがな」が熱い。
タイのX(旧Twitter)やTikTok、Facebookでは、日本語を勉強中のタイ人の投稿が急増している。「あいうえお」を練習した紙の写真、日本語アプリのスクリーンショット、タイ語と日本語を組み合わせた動画——そのコメント欄には「私もやってる!」「一緒に勉強しよう」という声が殺到している。2026年に入ってから、タイ国内での日本語学習者数は前年比で15〜20%増加しているとも報告されている。
なぜ今、タイの若者の間でこれほど日本語学習が広まっているのか。取材と分析から浮かび上がってきたのは、単純な「日本好き」を超えた、より実用的な動機だった。
タイ人の声——リアルな学習動機
タイSNSに投稿されたコメントから、代表的な声をご紹介しよう。
- 「日本のアニメとゲームのセリフをそのまま理解したくて始めた。字幕より速く理解できると感動する」(TikTok / @thaianimefan_official コメント欄)
- 「日本語が話せると就職の選択肢が広がる。タイに来ている日本企業がたくさんあるから、絶対有利になる」(Facebook / タイ就職活動グループ「หางานในไทยและญี่ปุ่น」)
- 「日本に旅行したとき、少しでも話せると地元の人がとても親切にしてくれた。あの経験からもっと勉強したくなった」(X / @bangkoktraveler25)
- 「日本語ってなんか可愛いんだよね。文字自体がアートみたいで好き。書くのが楽しい」(TikTok / タイ語日本語学習動画シリーズより)
背景にある日本文化のソフトパワー
この現象の背景には、アニメ・漫画・ゲームといった日本のポップカルチャーが、タイの若い世代にとって「育ってきた文化」になっていることが大きい。特にZ世代のタイ人にとって、日本語は「外国語」というよりも「好きなコンテンツの言語」という感覚が強い。
加えて現実的な理由として、タイに進出している日本企業の多さがある。製造業、サービス業、金融、飲食と幅広い分野に日本企業が根を張っており、バイリンガル人材への需要は高い。日本語能力試験(JLPT)N2以上を取得したタイ人の給与は、そうでない場合に比べて20〜30%高いという調査結果もある。
「なぜタイ人は日本語を選ぶのか」という問いへの答え
英語・中国語という選択肢もある中で、なぜ日本語が選ばれるのか。タイの日本語教育機関関係者は言う。「日本語はタイ人にとって文法的に比較的理解しやすい面があります。また、学習コンテンツが豊富で、アニメやゲームという”楽しみ”と結びついているため、継続率が高い」。
日本人の読者にとってこれは、少し誇らしい話ではないだろうか。タイの若者たちが「日本の言葉を話したい」と感じているということは、日本文化への深いリスペクトのあらわれだ。言葉は架け橋——タイと日本の関係は、若い世代の手でさらに深まっていきそうだ。
