
タイ東北部のウドンタニ県で、地元で人気を誇るラッパー「ヤング・ジェイ」(本名:ジャカポン・スリスック、23歳)が、仲間4人と共に深夜に知人男性の自宅を銃撃し、「共同殺人未遂」の疑いで逮捕された。タイ警察が6月17日に発表した。
事件が起きたのは6月16日の深夜2時頃。ウドンタニ市内の住宅地に、車で乗りつけたヤング・ジェイら5人組が突然、自動小銃を乱射。標的となったのは同じく地元の音楽関係者として知られる「アリ」と呼ばれる男性(27歳)の自宅で、外壁や窓に十数発の弾痕が残った。
「音楽業界の縄張り争い」か 関係者は否定
幸いにもアリ本人は外出中だったため無事だったが、室内にいた家族が恐怖で逃げ惑い、近隣住民も銃声に起こされて通報した。警察は事件直後から周辺の監視カメラ映像を解析し、逃走した車のナンバープレートからヤング・ジェイらを特定。翌朝までに全員を身柄拘束することに成功した。
地元メディアの取材に対し、ヤング・ジェイは「誰かに頼まれただけ。殺すつもりはなかった」と供述しているという。一方、捜査関係者は「被告はアリとの間で音楽のストリーミング収益や楽曲の権利をめぐるトラブルを抱えていたとみられる」と説明しており、タイのヒップホップシーンを揺るがす「縄張り争い」的な側面も浮上している。
地元では「ショック」の声 SNSでは即座に炎上
ヤング・ジェイはウドンタニ県を拠点に活動し、YoutubeやTikTokで数万人のフォロワーを持つ若手ラッパー。タイ語の歌詞で地元の日常生活をリリックにのせた楽曲が若者に人気を集めていた。今回の逮捕ニュースがSNSに広まると、ファンからは「信じられない」「なんでそんなことを」と落胆の声が相次いだ。
一方で「以前から喧嘩が多いと聞いていた」「あの界隈は危ない」といったシビアなコメントも続出。タイの芸能界ではこれまでも麻薬や暴力事件で逮捕されるアーティストが後を絶たないが、今回も「スターへの階段を自ら踏み外した」と嘆く声が多い。
ウドンタニ警察は5人全員を殺人未遂罪および凶器所持・使用の疑いで拘留。銃器の入手経路についても捜査を続けている。今後は起訴手続きに移行し、裁判所が保釈の可否を判断する見通しだ。
タイでは近年、若者の間でヒップホップ文化が急速に普及。音楽賞を受賞するラッパーも増える一方、暴力・麻薬との結びつきが社会問題として取り上げられる機会も増えている。今回の事件は「音楽で成功できるのに、なぜ暴力に頼るのか」という問いを改めてタイ社会に突きつけた格好だ。