
世界的なAIサービスを、タイ国民が無料で使える——。そんな国家プロジェクト「TH-AI Passport」への関心が爆発している。事前登録の件数は早くも100万件を突破した。デジタル立国を掲げるタイにとって、国民のAI活用を一気に底上げする試みだ。
TH-AI Passportは、14を超えるブランドの著名なAIサービスへのアクセス権を、タイ国民に無償で提供する仕組み。提供される権利は500万件が上限とされ、開始早々にその5分の1が埋まった計算になる。関心の高さがうかがえる滑り出しだ。
先行登録に殺到する市民
事前登録はすでに始まっており、SNSや各種メディアでも登録方法が盛んに紹介されている。無料で最先端のAIに触れられるとあって、学生から社会人まで幅広い層が申し込みに動いた。100万件突破は、その熱気を数字で裏づけるものだ。
タイでは近年、政府がデジタル経済への転換を強く後押ししている。生成AIは仕事や学習の生産性を大きく左右する道具になりつつあり、その利用機会を国民に広く開くことは、国全体の競争力に直結するとの考えがある。
「デジタル格差」を埋める狙い
有料のAIサービスは、個人が使うには決して安くない。所得や地域によって「AIを使える人・使えない人」の差が広がれば、新たな格差を生みかねない。TH-AI Passportは、そうした「デジタル格差」を国主導で埋めようとする施策と位置づけられる。
もっとも、権利の付与はゴールではなく出発点だ。配られたアクセス権が、実際にどれだけ生活や仕事の中で使いこなされるかが問われる。タイ国民のAIリテラシーをどこまで引き上げられるか。100万件の登録は、その壮大な社会実験の幕開けを告げている。