
6月22日に迫ったバンコク知事選に向けて、「廃墟ビル問題」が意外な形で争点として浮上した。バンコク都内に放置された廃墟ビルをめぐる土地利用の不透明さと行政の怠慢——そこには複雑な利権の構造が絡んでいるとされ、候補者たちが次々とその打開策を公約に打ち出し始めている。
タイラットの報道によれば、バンコク都内には現在200棟を超える廃墟認定ビルが存在する。
1997年のアジア通貨危機後に建設が中断されたものや、オーナーが行方不明・死亡して土地収用もできない状態のものなど、理由はさまざまだ。
「20年以上放置、なぜ動かないのか」——候補者が行政の怠慢を糾弾
現職のチャッチャート・シティパン前知事陣営は「任期中に廃墟ビル問題の台帳整備を進めてきた」と実績を強調。
一方、挑戦者のチャイワット・タナカムジョン氏は「20年以上放置されてきた事実こそが問題の本質だ。腐敗した土地利用行政を根本から変える」と正面から批判した。
廃墟ビルの多くは固定資産税の課税対象だが、実際には長年にわたって徴収できていないケースも多い。「土地所有者と行政の癒着が問題の根底にある」との指摘が複数の研究者からも出ている。
SNSでは「廃墟ビルを観光名所にしたらどうか」「貧困者向け住宅に転用すべき」など市民の創造的な提案が次々と投稿された。「建物が崩れて人に当たったらどうするのか」「子供たちが侵入してけがをしている」などの安全面の懸念も多く寄せられた。
「廃墟ビル撤去法」の整備は急務——6月22日の審判を前に
タイには現在、廃墟ビルを強制的に撤去させるための包括的な法律が存在しない。建物管理法の範囲内での対処に限られており、特に土地所有者が死亡・海外逃亡しているケースでは行政が手をこまねいているのが実情だ。
与野党を問わず「廃墟ビル特別措置法の制定」を求める声は以前からあったが、進展はほとんどなかった。今回の知事選を機に、この問題が国政レベルでも議論されるきっかけになるかもしれない。
6月22日の投票日まで残り2週間を切った。廃墟ビルが象徴する「都市の怠慢」に誰がメスを入れられるか——バンコク市民の審判が下る日は近い。次の知事が誰になっても「20年かかった問題が1期4年で解決する」と信じる楽観主義者は多くないだろう。