「もう韓国には行かない」――タイのSNSでくすぶり続けてきた不満が、ついに数字になって現れた。韓国メディアが、韓国を訪れるタイ人旅行者の激減を報じたのだ。理由は2つ。タイ側の購買力の低下と、韓国側の入国審査の厳格化である。
空港で「帰らされる」タイ人
タイ人旅行者の間で長く問題視されてきたのが、韓国の入国審査だ。正規の航空券とホテル予約を持ちながら、入国を拒否されて送り返される事例が繰り返し報告され、そのたびにタイのSNSは炎上してきた。
背景には、韓国国内で就労目的の不法滞在者、いわゆる「ピー・ノーイ(小さな幽霊)」の問題がある。韓国側は不法就労の水際対策として審査を強化したが、その網は一般の観光客にも及んだ。結果として「タイ人というだけで疑われる」という不信感が定着してしまった。
タイでは今年に入っても、労働相が海外での不法就労について「死亡しても遺体を送り返すことしかできない」と異例の警告を発するなど、この問題は政府レベルの懸案であり続けている。
財布の事情も重なった
もう一つの要因が、家計の圧迫だ。タイ経済は第2四半期に減速し、中東情勢に端を発するエネルギー価格の高騰が生活費を押し上げている。バーツ建てで見た海外旅行の割高感は増しており、韓国のような中距離・中価格帯の旅行先は真っ先に見直しの対象になる。
「審査で嫌な思いをするリスクを負って、高い金を払って行く理由がない」。タイの旅行フォーラムには、そうした投稿が並ぶ。
日本にとっての意味
この動きは、日本にとって無縁ではない。日本はタイ人に対する短期滞在ビザ免除措置(15日間)を2027年6月末まで1年延長すると発表しており、タイ人にとっての「行きやすさ」で明確に差がついている。
タイの旅行者が中距離の渡航先を選ぶとき、判断材料は価格だけではない。「歓迎されているかどうか」が、想像以上に大きな比重を占める。空港のカウンターで受けた1回の対応が、SNSで数十万人に共有される時代だ。
タイ人観光客はいま、行き先を選び直している。その先に日本があるかどうかは、入国ゲートでの数分間が決めることになる。