
11月24日(火)、満月の夜。タイ全土の川や運河、公園の池が、ろうそくの灯をともした無数の灯籠で埋め尽くされる。“タイで最もロマンチックな夜”とも言われる光の祭り、「ロイクラトン」だ。
バナナの葉で蓮の花をかたどった灯籠にろうそくと線香を立て、願いを込めて水面へそっと送り出す。見た目は日本の灯籠流しにそっくりだが、こちらには“厄落とし”あり、“恋占い”あり、北部へ行けば夜空を埋め尽くす天灯(コムローイ)あり。しんみりどころか、街じゅうがお祭りモードに突入する。しかも旅行者でも気軽に参加できるのがうれしい。
ただし、ノリだけで出かけると「どこで流せばいいの?」「その灯籠、実はNGでした」「メインの夜に飛行機が飛ばない!?」なんて目にも遭いかねない。そこで今回は、2026年の最新情報をもとに、ロイクラトンを120%楽しむための攻略法を一気に紹介しよう。
まずは押さえろ! ロイクラトン2026早見表
| 項目 | 2026年の内容 |
|---|---|
| ロイクラトン当日 | 11月24日(火)。タイ暦12月の満月の夜 |
| 祝日? | 祝日ではない。官公庁や銀行は通常どおり |
| バンコク都の公式会場 | 11月17〜29日(会場により日程が異なる) |
| チェンマイ(イーペン祭り) | メインの夜は11月24日。前後を含め3〜4日間にわたって催しが続く |
| スコータイ(歴史公園の祭典) | 11月15〜24日。光と音のショーは毎晩19時から |
| 有料イベントの目安 | スコータイのショー:500〜1,200バーツ/チェンマイ郊外のコムローイ・イベント:約4,900〜1万5,900バーツ |
3分でわかる! そもそもロイクラトンって何?
「ロイ」は“浮かべる”、「クラトン」は“灯籠(小さな器)”の意味。タイの太陰暦で12月の満月の夜に行われる伝統行事で、日付は毎年変わる。2025年は11月5日だったが、2026年は11月24日と、年によって大きく動くので要注意だ。
目的は、日ごろ恵みをもたらしてくれる水の女神「プラ・メー・コンカー」に感謝し、川を汚してきたことをわびること。同時に、灯籠に自分の“悪いもの”を乗せて流し、心機一転を図るという意味合いもある。
起源としてよく語られるのが、スコータイ王朝の宮廷女官「ナーン・ノッパマート」が蓮の花をかたどった灯籠を考案した、という伝説だ。もっとも、この話の出典とされる文献はずっと後の時代に書かれたとする見方もあり、史実かどうかは今も議論が分かれる。各地では彼女にちなんだ「ノッパマート嬢コンテスト」が開かれ、伝統衣装で着飾った女性たちが祭りに華を添える。
流し方の作法――“厄”も“恋”も灯籠に託せ
作法① 灯籠は「自然素材」一択

灯籠は会場周辺の屋台でいくらでも売っている。選ぶべきは、輪切りにしたバナナの幹を土台に、バナナの葉や花で飾った自然素材の灯籠だ。発泡スチロール製は論外。見た目がいくら華やかでも、川に残ってゴミになるだけである。
せっかくなら自分で作るのも手だ。バンコク都が11月23〜25日にマハーカーン砦で開く催しでは、自然素材の灯籠づくりのワークショップも用意される(詳しくは後述)。
作法② 火をともしたら“厄”を乗せる
灯籠にはろうそく1本と線香3本を立てるのが基本。火をつけたら手を合わせ、水の女神へのお礼とおわびを伝えてから、願い事を心の中で唱えよう。
タイでは、切った髪の毛や爪、コインを灯籠に入れて流すと厄が落ちるとも言われる。今年ツイてなかった人は、迷わず爪を切ってから出かけるべし。
作法③ カップルは“同時に”流すべし
恋人と一緒に流した灯籠が寄り添ったまま流れていけば、2人の仲は長続きする――そんな言い伝えもある。逆に、途中で離れていったら……。そこは見なかったことにするのが大人の作法だ。
作法④ 行けない人は“オンライン灯籠流し”
人混みが苦手な人や、日本からタイに思いをはせる人には、ネット上で灯籠を流すという選択肢もある。バンコク都は2025年、ウェブサイト「greener.bangkok.go.th」でオンライン灯籠流しを実施(2年目)。都立公園34か所とチャオプラヤー川沿いを再現した仮想空間で、2万3,347個の灯籠が流された。2026年も同様の企画があるか、都の発表をチェックしておきたい。
数字で見るロイクラトン――灯籠は8年で半分以下に
祭りの翌朝、バンコク都が回収した灯籠の数を発表するのが恒例だ。2025年は都内110か所で、ロイクラトン当日の20時から翌朝5時まで、夜通し回収作業が行われた。
| 年 | 回収された灯籠 | うち発泡スチロール製 |
|---|---|---|
| 2017年 | 81万1,945個 | 5万1,926個 |
| 2023年 | 63万9,828個 | 2万877個 |
| 2024年 | 51万4,590個 | 8,270個 |
| 2025年 | 39万1,027個 | 2万8,298個 |
総数は2017年の約81万個から、2025年は約39万個へ。8年で半分以下に減った。2025年も前年から約24%の減少だ。「1家族1灯籠」の呼びかけなど、環境に配慮する流れがはっきり数字に表れている。
ところが2025年は、思わぬ“逆走”もあった。発泡スチロール製が前年の約3.4倍(8,270個→2万8,298個)に増えたのだ。さらに、パンで作った灯籠も3万9,103個(全体の10.01%)にのぼった。パン製は“魚のエサになるからエコ”と思われがちだが、都は、公園の池のような閉じた水辺では食べ残しが水を汚す原因になるとして、使わないよう呼びかけている。“エコのつもり”が一番危ないのである。
【バンコク】都の公式会場は5か所+α。狙い目はここだ
バンコク都(BMA)は2026年、11月17〜29日に都内5か所を主会場としてロイクラトン祭りを開く。
- ワット・サケート(黄金の丘):11月17〜29日。オープニング会場で、黄金の丘の仏舎利を拝む恒例の祭り(11月17〜26日)も同時開催
- プラ・スメン砦:11月23〜25日。カオサン通りからも歩ける距離
- ラーマ8世橋:11月17〜29日。チャオプラヤー川沿いの会場
- プレームプラチャーコーン運河(ドンムアン警察署脇):11月23〜25日
- プレームプラチャーコーン運河(ワット・サミアンナーリー):11月23〜25日
穴場はマハーカーン砦。タイ衣装に“タダで”変身できる
5会場とは別に、都は11月23〜25日の17〜22時、旧市街のマハーカーン砦で特別イベント「ラタナコーシンの水辺の魅力」を開く。仮面舞踊劇のコーン、大衆演劇のリケー、伝統人形劇、東北タイの木琴ポーンラーンの演奏など、ステージは盛りだくさんだ。
見逃せないのが、タイの伝統衣装を無料で着られる企画「タイ衣装で灯籠流しへ」。ほかにも自然素材の灯籠や花輪、タイ菓子づくりのワークショップ、陸と水上のレトロ市場、水面に浮かぶ巨大灯籠、子ども版ノッパマート嬢コンテストまである。周辺のワット・サケート、ワット・ラーチャナッダーラーム、ワット・テープティダーラームの3寺院と砦をつなぐ“寺めぐり”もできる。
近所の公園でもOK。ただし“禁止事項”に注意
都は例年、都立公園を夜遅くまで開放している。2025年は21区の33公園を深夜0時まで開放し、ルンピニ公園やベンチャキティ公園、チャトゥチャック公園なども対象になった。2026年の対象公園は、都の発表を確認しよう。
都立公園では、発泡スチロール製やパン製の灯籠を使わないよう強く求められている。コムローイや花火、爆竹は厳禁で、園内での酒類の販売もできない。違反すれば法的措置の対象になる。
川沿いで“リッチに”決めるならホテル&クルーズ
チャオプラヤー川沿いでは、大型商業施設やホテルも独自のイベントを用意する。ICONSIAM(アイコンサイアム)は例年、リバーパークで「THAICONIC LOY KRATHONG」を開き、2025年はノッパマート嬢のパレードなどで盛り上がった。2026年は、シャングリ・ラ ホテル バンコクが24日夜に特別イベントを予定しているほか、ICONSIAM発着のディナークルーズなど、当日限定のプランも出そろってきた。人気どころは早めの予約が鉄則だ。
編集部のホンネ:当日夜の川沿いは、船着き場も道路も大混雑。都が祭りを前に桟橋や船着き場の安全点検を行うほどだ。ぎゅうぎゅうの桟橋には近づかず、帰りの足を先に決めておくのが“勝ち組”の動き方である。
【チェンマイ】街は無料で十分楽しい。空一面の“コムローイ”は郊外の有料会場で

北部チェンマイでは、ロイクラトンはランナー(北タイ)式の「イーペン祭り」と重なる。川に灯籠を流すだけでなく、街じゅうを提灯で飾り、寺では素焼きの小皿の灯明「パーン・プラティープ」をともし、天灯「コムローイ」を空に放つ。光の量がケタ違いなのだ。2026年のメインの夜はバンコクと同じ11月24日で、前後を含め3〜4日間にわたって催しが続く。
無料で楽しむなら「ターペー門」と「ピン川」
祭りの中心は、旧市街の玄関口・ターペー門。提灯で飾られた門の周辺では開会式やコンテストが開かれ、ピン川沿い(ナワラット橋周辺)では灯籠流しが楽しめる。
最大の見ものは、電飾をまとった巨大灯籠の山車がターペー門から市役所まで練り歩く「大灯籠パレード」。2025年は31台が参加し、ロイクラトン翌日の夜に行われた。2026年は25日の開催となる見込みだ。
写真で見る“空一面のコムローイ”は有料イベント
SNSでおなじみの、無数のコムローイが一斉に夜空へ昇る光景。実はあれは、郊外で開かれる許可制・有料のイベントであることが多い。コムローイの放流は航空法や県の告示で厳しく制限されていて、近年はチェンマイ市内の公共の場所での放流は原則禁止。許可を得た場所でしか上げられないのだ。
代表格が、メーオン郡のCADカルチュラル・センター・ランナーで11月24・25日に開かれる「CAD Khomloy Sky Lantern Festival」。旅行会社などの案内によると、2026年のチケットは席種によって約4,900〜1万5,900バーツ。決して安くはないが、“一生に一度”の光景を求めるなら検討の価値はある。購入は公式サイトか信頼できる代理店で。
要注意! メインの夜は飛行機が飛ばないことも
コムローイは航空機の安全を脅かすため、チェンマイ空港では例年、放流の時間帯を避けて運航スケジュールが組み直される。2025年は10月31日時点で65便が欠航、96便が時刻変更となり、44便が臨時に増便された。2024年には、各社がロイクラトン当日の10〜12時と19時〜翌1時の運航を見合わせている。
2026年も同様の措置が取られる可能性が高い。チェンマイ行きの航空券は、日付と時刻をよく確かめてから買うべし。
編集部のホンネ:宿はターペー門かピン川の近くに取るのが鉄則。メインの夜は大渋滞を覚悟し、歩いて回れる範囲で楽しむのが正解だ。
【スコータイ】“元祖”の地で、遺跡×光と音のショーに酔う

ロイクラトン発祥の伝説が残るスコータイ。世界遺産のスコータイ歴史公園では、11月15〜24日に「ロイクラトン・パオティアン・レンファイ祭り」(灯籠・ろうそく・花火の祭典)が開かれる。
目玉は、遺跡を舞台にした光と音のショー。上演は毎晩19時からで、ロイクラトン当日の24日は20時30分からの追加公演もある。チケットは500/900/1,200バーツの3種類で、販売はすでに5月から始まっている。
ライトアップされた仏塔や仏像を背に、水面に灯籠が揺れる光景は、まさに“タイの原風景”。チェンマイと比べて落ち着いた雰囲気だとも言われ、伝統的な祭りをじっくり味わいたい派にはこちらがおすすめだ。
まだある! 地方の“個性派”ロイクラトン
北部ターク県の「ロイクラトン・サーイ」も一見の価値ありだ。ヤシの実の殻に灯をともした小さな灯籠をピン川に次々と流し、水面に“光の帯”をつくる伝統行事で、1,000個の灯火を流す競技が名物になっている。2025年は11月2〜5日に開かれた。
知らないとヤバい! ロイクラトンNG集5か条
- 発泡スチロールの灯籠を流す――川に残ってゴミになるだけ。都も使わないよう強く求めている
- 都立公園でパンの灯籠を流す――閉じた池では、食べ残しが水を汚す原因になる
- バンコクでコムローイや花火を上げる――都は例年、ロイクラトン期間の放流や打ち上げを禁じる告示を出しており、違反すれば罰金や禁錮の対象。スワンナプームやドンムアン、プーケットなど空港周辺でも放流を控えるよう呼びかけられてきた
- 公園で酒盛りする――都立公園の中では酒類の販売も禁止。飲むなら公園の外で、マナーを守って
- 混雑した桟橋や水辺で無理をする――足元は暗く、人も多い。子ども連れは特に目を離さないこと。人混みではスリにも注意
結論:あなたが行くべきロイクラトンはここだ
短期旅行や初めての人なら、バンコク。マハーカーン砦でタイ衣装に着替え、旧市街で灯籠を流せば、それだけで旅のハイライトになる。写真映えを狙うなら、チェンマイ。ただし、飛行機と宿の確保は最優先で。伝統と歴史を味わいたいなら、スコータイ。遺跡を舞台にした光と音のショーは、ここでしか見られない。そして在住者なら、近所の公園で十分。家族やパートナーと1つの灯籠を流すのが、いちばん“今っぽい”楽しみ方かもしれない。
灯籠の灯が見えなくなるまで見送れば、1年分の厄はもう川の向こう。2026年の“厄落とし”は、11月24日の満月に託してみてはいかがだろうか。
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※本記事の情報は2026年11月4日時点のものです。日程・料金・規制は変更される場合があります。お出かけ前に、主催者や自治体の最新の発表をご確認ください。
参考:バンコク都(BMA)発表、タイ政府広報局(thailand.go.th)、チェンマイ空港・タイ航空無線(AEROTHAI)関連報道、Thansettakij、PPTV、Krungthep Turakij(Bangkokbiznews)ほか