
愛知・名古屋で開かれたアジア競技大会を巡り、愛知県の大村秀章知事の発言がタイのSNSで波紋を広げている。タイ代表のテックボールチームが「食事の量が少ない」と動画で訴えたことに対し、大会組織委員会の会長も務める大村知事が10月6日の記者会見で厳しい言葉を返した。タイ紙デイリーニュースやタイポストが7日、相次いで報じた。
発端は「昼食が少ない」という動画
タイのニュースサイト、タイガーによると、発端は9月17日。タイ代表のヘッドコーチ、レーワット氏がFacebookページ「Teqball Thailand Inside」に、会場の昼食の量が少ないと冗談交じりに伝える動画を投稿した。タイポストによると、選手たちは空腹を満たすため、自腹で吉野家の牛丼を買ったという。
組織委員会は9月22日、テックボールの食事は組織委が直接用意したものではないと説明していた。テックボールはアジア・オリンピック評議会の要請で追加された競技で、運営は国際競技団体が担い、追加の費用は県や組織委が負担しない取り決めだった。
そのうえで大村知事は6日の会見で、タイ側が何をしに来たのか、再生回数を稼ぎに来たのか、という趣旨の疑問を呈し、こうした人には大会に来てほしくなかったという趣旨の発言をした。知事の発言は英語でも紹介され、タイ語に訳されてタイのSNSに広まった。
タイと日本の反応
タイのメディアが伝えた主な反応は次の通りだ。
・タイのSNS利用者が知事の発言を強く批判した(出所:タイ紙デイリーニュース)
・この騒動が日本のイメージを傷つけかねないと懸念する声が出た(出所:タイガー)
・タイ代表が混合ダブルス、女子ダブルス、男子ダブルスで金メダル3個を獲得し、競技の結果で批判に応えたと受け止める声があった(出所:タイポスト)
・日本でも、知事の言葉が強すぎるとの批判が出た。弁護士の紀藤正樹氏はXで、トップが思っても口にすべきではないという趣旨の投稿をした(出所:タイガー、毎日新聞の報道を引用)
・一方、食事は組織委の提供ではなく、動画が主催者の落ち度のように受け取られかねなかったとして、知事を擁護する日本の書き込みもあった(出所:タイガー)
考察:説明の仕方ひとつで印象は変わる
今回の騒動は、責任の所在の問題が感情的な言葉の応酬に変わった例だ。食事の手配が国際競技団体の責任だったことは、組織委が以前から説明していた。それでも「来てほしくなかった」と受け取られる表現は、国際大会の主催者の発言として重く響いた。タイのメディアは、日本人の弁護士やネット利用者が知事を批判していることも詳しく伝えており、日本全体への反感というより、発言そのものへの違和感として受け止められている面が大きい。
タイポストによると、テックボールのタイ代表は大会で3つの金メダルを獲得した。知事側から追加の説明や撤回は確認されておらず、タイのテックボール協会も公式な反応を出していない。今回の一件が、スポーツを通じた両国の良い関係に影を落とさないことを願いたい。