5月1日から、タイの農村部を走る幹線道路の一部で夜間の街灯が消えた——。タイ地方道路局(DRR)が発表した省エネ措置により、全国3万キロメートル以上に及ぶ農村道路のうち、「低リスク路線」に分類された区間で照明の消灯または減灯が始まった。中東の地政学的緊張に伴うエネルギーコストの高騰が、タイの農村部の夜を暗くすることになった。

「低リスク路線」とは何か?
DRRのピチット・フーンシリ局長によれば、消灯対象となるのは「夜間交通量が少なく、急カーブや交差点といった危険箇所がなく、事故実績がない路線」に限定されるという。コミュニティや集落のそばを通る路線については対象外とし、地元担当事務所が事前に住民への周知を行うよう指示されている。
一方で「低リスク」の判断基準が曖昧だとして、地方自治体からは困惑の声も上がっている。特に夜間に農作業の帰路につく農家の多い地域では、「事故が起きてからでは遅い」という懸念が根強い。
省エネの背景——中東情勢が電気代を押し上げ
今回の措置はエネルギーコスト削減が主目的だ。ホルムズ海峡周辺の緊張が続く中、液化天然ガス(LNG)の輸入価格が高止まりしており、タイの電力コストに直接影響を与えている。
DRRが管理する道路の街灯に要するコストは年間数十億バーツに上るとされ、仮に2割の消費電力削減が実現すれば、数十億バーツ規模の節約につながると試算されている。
農村住民の反応は賛否両論
「節電の趣旨は理解できるが、自分の家の前が真っ暗になるのは困る」——東北タイのある農村住民はこう語る。夜間の犯罪リスクの増大を懸念する声もあり、地域コミュニティによる防犯パトロールの強化が求められる状況だ。
一方、都市部のSNSユーザーからは「農村の暗い夜空で星が見えるようになるかも」という呑気なコメントも。しかしそこで生活する人々にとっては笑い事ではない。省エネとインフラの安全性をどう両立させるか、地方行政の真価が問われる措置となった。