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タイで野良犬がくわえた黒い袋、破れた穴から新生児の男児が見つかり保護される

犬がくわえて引きずっていた黒いビニール袋。その中に、へその緒がついたままの新生児がいた。タイ中部パトゥムターニー県クロンルアン郡の住宅地で、生後間もない男児が命をつなぎとめた。助けたのは、通りかかった24歳の女性フードデリバリー配達員と、名前も分からない1匹の野良犬だった。

2026年8月24日午後9時ごろ。仕事を終えて帰宅途中だったラッチャノック・クラブットさん(24)は、クロンシータワンオーク10と呼ばれる路地の奥で、野良犬が黒い袋を必死に引きずっているのを見つけた。犬は袋に噛みつき、何度も引っ張っていた。

「ゴミ袋だと思ったんです。でも、犬の様子が普通じゃなかった」。ラッチャノックさんはそう振り返る。バイクを止めて近づくと、袋の中から、かすかな声が聞こえた。

犬が開けた穴が、呼吸を守った

袋の口はしっかりと縛られていた。だが犬が噛み破ったことで、袋には穴が開いていた。救急隊員によれば、この穴があったからこそ、赤ちゃんは窒息を免れたとみられる。

「袋が閉じたままだったら、間に合わなかったでしょう」。現場に駆けつけた救急隊の関係者はそう語った。男児はへその緒がついたままの新生児で、呼吸は弱く、体は冷えきっていた。ラッチャノックさんが通報し、救急隊と警察が到着。男児はチュラロンコン大学病院へ緊急搬送された。

「あの犬がいなかったら」

警察は現場周辺の防犯カメラの映像を回収し、袋を置いた人物の特定を急いでいる。近隣住民への聞き込みも進めている。担当の捜査員は「産んですぐに置いていったとみられる。母親の身元と、その事情を確認する必要がある」と話した。

近所に住む女性は「この路地は夜になると人が通らない。犬がいなければ、朝まで誰も気づかなかったはず」と話した。別の住民は「あの犬はいつもこのあたりをうろうろしている。誰の犬でもないけれど、みんな餌をやっていた」と証言する。

SNSでは、犬をたたえる書き込みが相次いだ。「野良犬のほうが人間らしい」「この犬に家をあげてほしい」「赤ちゃんを捨てた人にも事情があるのかもしれないけれど、せめて安全な場所に置いてほしかった」といった趣旨の投稿が、フェイスブックやX上に並んだ。

タイでは、望まぬ妊娠を抱えた女性が公的支援にたどり着けないまま出産に至る例が後を絶たない。寺院や病院に設置された「赤ちゃんポスト」的な受け入れ先も限られており、路上への遺棄が繰り返されてきた。

病院によれば、男児の容体は安定に向かっているという。名前も飼い主もいない1匹の犬が、この国の制度の隙間を、その日だけは埋めた。

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