
青信号で発進しただけなのに、屋根に、ボンネットに、次々と黒い塊が降ってきた。バンコクのラマ9世通り、ラムカムヘーン交差点方面への下り線で19日、高架道路の路面改修工事現場から溶けたアスファルトが飛散し、ベンツやBMWを含む73台の車が被害を受けた。
「気づいたら屋根に黒い染みが」
被害が集中したのは、工事車両が路面改修を行っていた区間の直下だ。走行していたドライバーたちは、頭上からアスファルトの塊や飛沫が降り注ぐのを目撃した。被害はボンネット、屋根、リアスポイラーなど車体全体に及び、高級車から一般乗用車、電動自動車まで幅広い車種が巻き込まれた。
最後に被害を届け出た29歳の女性は「気づいたら屋根に黒い染みがついていて、しばらく何が起きたか分からなかった」と警察に説明した。その上で「受注企業はもっと注意深く、交通量の少ない時間帯に作業をするべきだ」と苦言を呈した。
73件の被害届、企業は賠償に応じる意向
警察にはこれまでに73件の被害届が出されている。捜査を担当するトゥワナン・ギンイウン警察官は「これは過失による他人の財産損害罪に該当する可能性がある」と述べ、被害者に対して引き続き届け出るよう呼びかけている。工事を請け負った企業側は「損害賠償に応じる」と警察に伝えているという。
SNS上には「せっかくの新車がアスファルトまみれになった」「なぜ交通量の多い時間帯に工事をしたのか理解できない」「賠償だけで済ませていい話ではない」といった趣旨の投稿が相次いだ。被害車両のオーナーからは、洗車やタッチアップ塗装の費用負担をめぐる不満の声も上がっている。
再発防止へ作業時間の見直し求める声
バンコクでは高架道路の改修工事が各所で進められており、今回のような飛散事故は初めてではない。警察は再発防止に向け、工事事業者に作業時間帯の見直しや飛散防止対策の徹底を求める方針だ。被害を受けたドライバーたちは、警察署での被害届提出と保険会社への連絡を急いでいる。
信号待ちの数十秒が、思わぬ出費の始まりになった。
過去にも同種のトラブル、抜本対策は手つかず
バンコク都内では高架道路や高速道路の改修工事が各所で同時並行的に進んでおり、路面材の飛散による車両被害は今回が初めてではないという。地元メディアの取材に応じた交通工学の専門家は「防護ネットやシートの設置基準はあるが、現場ごとの徹底に差がある」と指摘し、統一的な安全基準の運用を求めた。
被害者の1人は「保険を使うべきか、企業の賠償を待つべきか判断がつかない」と困惑した様子を見せた。警察は被害者に対し、写真などの証拠を保存した上で速やかに届け出るよう改めて呼びかけている。