
「タイの自動車生産基盤が崩れかねない」――。タイ自動車産業界が、輸入EV(電気自動車)の急増に強い危機感を表明した。自動車部品工業会の会長らは、国内生産の縮小、国内販売の低迷、輸出の停滞という三重苦に輸入EVの攻勢が加わっているとして、政府に3つの対策パッケージを求めた。タイ語経済紙プラチャーチャート・トゥラキットが報じた。
タイは「アジアのデトロイト」と呼ばれる自動車生産大国で、生産の約半分を輸出が占める。しかし足元では国内市場の購買力低下と家計債務問題で新車販売が伸び悩み、生産台数も減少傾向にある。そこに完成車として輸入されるEVが流れ込み、国内で車両を生産する意味そのものが揺らぎ始めているというのが業界の訴えだ。部品業界の幹部は「完成車輸入が増えれば、国内の部品サプライチェーンには一銭も落ちない。雇用への影響は計り知れない」と危機感を隠さない。
業界が求める「3つの対策」
業界側が政府に要求したのは、(1)国内生産基盤の保護、(2)投資促進策の強化、(3)市場刺激策の3本柱だ。具体的には、輸入車と国産車の税制バランスの見直し、EV部品の現地調達を促す優遇策、買い替え需要を喚起する消費刺激策などが念頭にあるとみられる。EV振興策で外資メーカーの工場誘致に成功してきたタイだが、「輸入で売るだけ」の事業者が増えれば政策の狙いが骨抜きになるとの指摘だ。
「EV大国」と「生産大国」の両立なるか
タイ政府はEV普及目標を掲げる一方、既存の内燃機関車産業は数十万人の雇用を支えており、移行のスピード調整は綱渡りが続く。日系メーカーの生産再編も進む中、タイが「EVも作れる生産大国」として生き残れるか、「EVを買うだけの市場」に転落するか。政府の対応が今後の分水嶺となりそうだ。