
タイの道路を走る電気自動車(EV)が、ひと目で見分けられるようになる。タイ陸運局(DLT)が、EV専用の新しいナンバープレートを導入する準備を進めている。デザインは薄い水色の地に黒文字、そして光を反射する仕様。2027年第1四半期からの運用開始を目指す。
色を変える理由は、見栄えではない。人命に関わる実務上の必要から出た制度である。
「事故現場で、救助隊が判断できるようにする」
タイ陸運局のスラポン局長は、導入の狙いをこう説明する。
「電動車と内燃機関車を区別できるようにすることで、事故が起きたときの救助活動が速くなります」
EVは高電圧のバッテリーを搭載しており、衝突事故で車体が損傷した場合、感電やバッテリーの熱暴走(サーマルランナウェイ)のリスクがある。救助隊にとって、目の前の車がEVかどうかは、切断してよい箇所や消火方法の判断を左右する。ナンバープレートの色を分けるのは、その一瞬の判断を助けるための仕組みだ。
同様の仕組みは各国で導入が進んでおり、EVに専用色や識別マークを与える国は増えている。
既存の約46万台は「ジャスミン柄マグネット」で対応
新プレートの対象は、新規登録のEV車両である。すでに登録済みの電動車は、およそ46万台。これらについては、プレートの交換は不要とされた。
代わりに配布されるのが、ジャスミンの花をあしらった「EV」表記入りのマグネットステッカーだ。車体に貼るだけで識別できる。一斉交換にともなう窓口の混雑と、所有者の負担を避けるための現実的な落としどころである。
導入のスケジュールは、2026年8月末までに閣議へ承認を申請し、約3カ月の手続きを経て2027年第1四半期から運用開始という流れが想定されている。
EV大国化が生んだ「識別」の必要
タイでEV識別が急務になった背景には、普及の速さがある。2026年6月時点の電動車の新規登録は月間3万9606台規模で、前月比1.01%増。1〜7月の新車登録全体に占めるEV・BEVの比率は27.53%に達し、4台に1台以上が電気で走る計算になった。ガソリン車は52.48%、ハイブリッド車は19.99%である。
モデル別では中国ブランドの躍進が続き、Jaecoo 5 EVロングレンジMaxが1万1198台で首位、MG S5 EVが7636台で続いた。タイ市場が「EVを選ぶのが当たり前」の段階に入ったことを、数字が示している。
タイでレンタカーを借りる日本人旅行者にとっても、水色のプレートは分かりやすい目印になる。充電が必要な車かどうか、返却前に慌てて確認する場面も減るはずだ。
もっとも、46万台に配られるジャスミン柄のマグネットが、何枚くらい正しく貼られたままでいるのか。そこはタイらしく、走り出してみないと分からない。