バンコク都が、高架鉄道BTSの「グリーンライン(スクンビット線・シーロム線)」をタイ政府に移管する準備を進めている。狙いは明快だ。将来にわたって都財政にのしかかる負担を、切り離すことである。
グリーンラインは、バンコクの都市交通の背骨とも言える路線だ。スクンビット通りとシーロム通りという二大幹線の上を走り、通勤・観光の双方で圧倒的な利用者を抱える。同時に、延伸区間をめぐる巨額の債務と運賃設定の問題が、長年にわたって都政の火種であり続けてきた。
「将来の負担を減らす」
バンコク都は、路線を政府に移管することで今後発生する負担を軽減する方針を示している。延伸部分の建設費と運営委託費は、都の一般会計では吸収しきれない規模に膨らんでいた。
この動きは、チャッチャート・シッティパン知事が進める都政の財政再編と歩調を合わせている。知事はすでに、2570年度(西暦2027年度)の都予算案として930億バーツ規模の予算を都議会に提出し、「均衡を基本に、9つの分野の戦略でバンコクを機会の街へ」と説明している。
運賃はどうなるのか
利用者にとって最大の関心事は運賃だ。グリーンラインの運賃をめぐっては、上限をいくらに設定するかが繰り返し議論されてきた。バンコクでは、都心部に「渋滞税」を導入して鉄道運賃を引き下げるというロンドン型の構想も浮上しており、公共交通の料金体系全体が見直しの局面に入っている。
路線が中央政府の管理下に入れば、運賃の決定権も移ることになる。それが値下げにつながるのか、それとも別の判断が下されるのかは、まだ見えていない。
都議会は監視を続ける構え
バンコク都議会では、新任議員が多数入った新体制の下で、予算審議の厳格化が唱えられている。議長は「これまでどおり厳しくチェックする」と明言しており、移管の条件についても議会での議論が続く見通しだ。
都議会をめぐっては、議員が他人の代わりに投票ボタンを押したとされる問題や、全会議のライブ配信を決議するなど、透明性をめぐる話題が相次いでいる。
バンコクで暮らす人にとって
日本人駐在員や長期滞在者にとって、BTSグリーンラインは日常の足そのものだ。運営主体が変われば、ダイヤ、延伸計画、そして運賃のすべてに影響が及ぶ可能性がある。
都市鉄道は、作るより維持するほうが難しい。バンコクは今、その当たり前を制度として引き受け直そうとしている。