
タイ中部アユタヤ県の民家で、55歳の男性がビールを飲んだ後にドリアンを食べたところ意識を失い、病院に緊急搬送される騒ぎがあった。「ビールとドリアンを一緒に口にすると死ぬ」という、タイでは誰もが一度は聞いたことのある言い伝えが、まさに目の前で現実になったかのような出来事に、家族も騒然となった。
事件が起きたのは8月9日午後4時ごろ、アユタヤ県ムアン郡クロンスワンプルー地区、ワット・パナンチューン近くの集落にある民家。バンコクから帰省していたアヌポップさん(55)が、弟のナックロップさん(50)と朝から自宅でビールを酌み交わしていた。
「うまいな、このドリアン」と言った直後に
午後4時ごろ、アヌポップさんはドリアンが食べたくなり、半分ほどを平らげた。「うまいな、このドリアン」――弟のナックロップさんによれば、それが兄の最後のまともな言葉だったという。しばらくすると眠気を訴えて横になり、母親が呼びかけても反応がなくなった。口から泡を吹き、意識を失った兄の姿に、家族は救助団体に通報した。
ナックロップさんは取材に「自分も同じ量のビールとドリアンを口にしたが、何ともなかった」と証言する。「兄はバンコクから、ドリアンを買ってきたことで子どもたちに怒られて拗ねていたんです。それで母に会いに来て、私と一緒に飲みながら『ドリアンはうまい』と言っていた矢先でした」。
71歳の母「白目をむいて泡を吹いた」
現場に居合わせた母親のオーラサーさん(71)は、目の前で息子が倒れる瞬間を目撃した。「最初は普通に話していたのに、だんだん白目をむいて泡を吹いて、そのまま倒れてしまった」と声を震わせる。「脳に腫瘍の持病があるとは聞いていましたが、まさか目の前でこんなことになるとは思わなかった」。
救助隊員は現場に到着後、アヌポップさんの反応がないことを確認し、直ちにアユタヤ県立病院へ搬送した。家の中にはビール瓶とケース、食べかけのドリアンが1個残されていたという。
SNSでは「都市伝説」論争が再燃
この一件はSNSでも瞬く間に拡散し、タイで長年語り継がれる「ビール・ドリアン同時摂取は危険」という説をめぐって議論が沸き起こった。
- 「昔からおばあちゃんに言われてきた。やっぱり本当だったんだ」といった趣旨の書き込みが相次いだ(出所:Facebook)
- 「ドリアンのせいというより、脳腫瘍と大量のアルコールが重なったのでは」と冷静な分析を求める声も上がった(出所:X)
- 「毎年この時期になると同じような話を聞く。ドリアンを悪者にする前に飲みすぎを心配すべき」といった趣旨の投稿も見られた(出所:Facebook)
実際のところ、ビールとドリアンの組み合わせが致死的だとする医学的な因果関係は確立されていない。タイの医療関係者はこれまでも、ドリアンに含まれる硫黄化合物がアルコール分解を妨げるとの説はあるものの、意識不明に直結するケースは極めて稀だと指摘してきた。今回もアヌポップさんに脳腫瘍の持病があったことから、警察と病院はアルコールとドリアンの組み合わせだけが原因と断定せず、持病との関連も含めて慎重に経過を見ている段階だ。
今も意識戻らず、集中治療続く
本稿執筆時点で、アヌポップさんはまだ意識を取り戻しておらず、アユタヤ県立病院で集中治療が続けられている。家族は快復を祈りながら、病室の外で見守っている状態だ。
日本では「うなぎと梅干し」の食べ合わせが都市伝説として知られるが、タイでは「ビールとドリアン」がその代表格。果物の王様が病室送りの一因になりかねないというのだから、南国の夏はやはり一筋縄ではいかない。