
中国の長城汽車(GWM)が、タイ市場に新型「TANK 500 3.0Tディーゼル」を投入する。価格は166万9000バーツから179万9000バーツ。8月21日から30日まで開催中の「ビッグ・モーター・セール2026」で披露された。
電動化一色に見えるタイ市場に、3.0リッターのディーゼルエンジンで乗り込むという選択である。
2.4リッター級の燃費で、3.0リッターの力
搭載されるのは3.0リッターのディーゼルエンジン。GWMは、2.4リッタークラスのディーゼルに匹敵する燃費効率を保ちながら、より高い出力を出せると説明している。カテゴリーはプレミアムPPV(ピックアップ由来のSUV)だ。
グレード構成は2輪駆動と4輪駆動。早期予約価格では、ULTRA 4WDが171万9000バーツ、BLACK WARRIOR 4WDが174万9000バーツとなる。ボディカラーは黒、白、グレーの3色。早期特典は9月30日まで適用される。
納車時期は分かれている。4WD系は2026年9月下旬から、2WD系は2027年1月以降だ。
「あらゆる場面、あらゆるパワートレイン」
GWMはこのモデルの位置づけを、「あらゆる場面、あらゆるパワートレイン、あらゆるユーザーに応える」と表現している。想定する購買層は、ファミリー、企業役員、そして多様な路面状況での走破性を求める事業者だ。
タイの道路事情を考えれば、この訴求には説得力がある。バンコクの渋滞と高速道路、地方の未舗装路、そして雨季の冠水路。1台でこれらすべてをこなす車への需要は根強い。
EVに振り切った市場での逆張り
タイの新車市場は、この数年で様変わりした。中国系ブランドが20社近く参入し、上半期のBEV販売は10万台を超えた。乗用車市場でのEVシェアは3割前後に達している。タイ政府もEV優遇策を通じて電動化を後押ししてきた。
そのGWM自身、タイではORAやHAVALといったEV・ハイブリッドで存在感を高めてきたブランドである。そこに大排気量ディーゼルを持ち込むのは、一見すると逆行に映る。
だが、タイの自動車市場にはもう一つの現実がある。ピックアップトラックとPPVという、この国特有の巨大なセグメントだ。トヨタ、いすゞが長年にわたって築いた牙城であり、耐久性と積載力、そして中古車価格の高さが評価されてきた。ここはEVがまだ食い込めていない領域である。
170万バーツ台という価格は、日本円でおよそ780万円前後。決して安くはない。同価格帯には日系のフラッグシップPPVも並ぶ。
タイ政府は現在、EV優遇策の全面的な見直しに着手している。制度の風向きが変われば、この「大排気量の刺客」の立ち位置も変わってくる。GWMの一手が読み勝ちになるかどうかは、来年以降の販売台数が答えを出す。