
タイ南部ソンクラー湖に浮かぶ2隻の漁船に、衛星インターネット端末「Starlink」が積まれていた。船主たちは口をそろえてこう主張した。「これが違法だなんて、知らなかった」。
湖のど真ん中で発覚した無許可の通信設備
8月5日、水上警察隊とタイ国家放送通信委員会(NBTC)の合同チームが、ソンクラー県内のソンクラー湖水路をパトロール中、湖上に停泊していた漁船2隻に無許可の通信機器が設置されているのを発見した。水上警察第7課のワンピチット・ワッタナサックモンター署長の指揮のもと、コンキアット・ヘームターノン署長代理らが現場に急行し、船主とみられるパナイコーン容疑者(43)とチャー容疑者(67)の身柄を確保した。
捜索の結果、パナイコーン容疑者からは、白い衛星インターネット受信・分配装置(Starlinkルーター)1台とケーブル一式、さらに別型式のStarlink送受信機1台とケーブル一式が押収された。一方のチャー容疑者からは、受信用アンテナ1式、送信用アンテナ1式、信号増幅器1台が見つかった。
「自分で買って自分で取り付けた」あっさりとした自供
2人は「自分たちが船の所有者であり管理者だ」と名乗り出た上で、「Starlinkの衛星インターネット受信機や、携帯電話の電波増幅器は、自分たちで注文して自分たちで取り付けた」とあっさり認めた。ところが続けて「これらの機材が違法なものだとは知らなかった」と主張したという。
タイでは無線通信機器の輸入・所持・使用や、無許可での無線局の開設には厳格な許可制度があり、違反すれば関税法および無線通信関連法規に抵触する。今回の2人は「密輸品・不正輸入品・通関手続きを経ていない物品の取り扱い」および「無許可の無線通信機器の所持・輸入・輸出・取引、無許可の無線局開設」の容疑で取り調べを受けている。
SNSでは「湖の上でも圏外知らず」と話題に
今回の摘発はSNS上でも話題を呼び、「湖のど真ん中でも高速ネットが使い放題だったわけか」「知らなかったで済むなら警察はいらない」といった趣旨の投稿が相次いだ。実際、Starlinkは僻地や洋上でも高速通信が可能なことで知られ、タイでも漁業関係者の間で非公式に導入する例が増えているとされる。
当局は今後、押収した機材を精査するとともに、同種の違法設置が他の漁船にも広がっていないか、湖全域での取り締まりを強化する方針だ。日本ではまず考えにくい「湖に浮かぶ漁船が違法Wi-Fiスポットと化していた」というこの一件、タイではこういうことが本当に起こる。