
タイのキャッサバ(タピオカ)産業が、統計開始以来最悪とされる原料不足に陥っている。タイ・キャッサバ関連4団体が8月7日に発表した2026/27年度の生産見通しによれば、国内生産量はわずか1875万7000トンにとどまり、加工工場の稼働率は生産能力の2~3割に落ち込んでいる。輸出収入の減少額は850億バーツ規模に達する見通しだ。
発表を行ったのは、タイ・キャッサバ貿易協会、タイ・キャッサバ製品工業協会、タイ・タピオカ澱粉協会、タイ東北部キャッサバ製造業協会の4団体でつくる生産調査団。団長のブンチャイ・シーチャイパーニット氏によると、当初は2025/26年度の生産量を2280万トンと見積もっていたが、税関統計や商業会議所のデータをもとに精査した結果、周辺国からの輸入分350万トンを差し引いた国内純生産量は実質わずか1858万トンにとどまることが判明したという。
原料需要4500万トンに対し供給は半分以下
タイ国内のキャッサバ加工産業が必要とする原料需要は年間3700万~4500万トンに上るとされる一方、実際の生産量は2000万トンに届かず、深刻な原料不足が生じている。加工工場の多くは生産能力の2~3割程度でしか稼働できておらず、特に主要産地であるナコーンラーチャシーマー県では、原料の入荷量が月間5000~8000トンにとどまるなど、工場の潜在能力に対して極めて低い水準にある。
輸出面への打撃も深刻だ。タピオカチップの輸出量は従来の340万トンから80万トン台へと7割も減少し、タピオカ澱粉の輸出も22%減の250万トンに落ち込んだ。輸出額ベースでは、2022年に1554億9800万バーツに達したピーク時と比較し、2026年には700億バーツを下回る水準まで落ち込む見通しで、失われる経済価値は850億バーツを超えるとみられている。
カンボジア国境閉鎖の影響でラオスからの輸入増
生産減少の主因は、キャッサバ葉巻病(CMD)の蔓延と、健全な苗木(茎の切り穂)の不足とされる。加えてカンボジアとの国境閉鎖の影響で、従来8.9万トンに上っていた原料や製品の輸入量が3.5万トンまで減少し、タイの業者は代替としてラオスからの澱粉輸入を増やす動きを見せている。東部地方ではかつて多数存在したキャッサバ集荷場が事実上ゼロになり、業者の多くが廃業や配車業への転職を余儀なくされているという。
業界団体、政府に850億バーツ規模の支援を要請
4団体は政府に対し、約80億バーツの復興予算と4つの重点対策を要請した。具体的には、葉巻病対策を国家的課題と位置づけて健全な苗木・耐病性品種の普及を急ぐこと、灌漑設備や技術投資により3年以内に生産量を3500万トンまで回復させること、公正な取引の仕組みを整備すること、そして輸出入管理の厳格化とデータベース整備によるサプライチェーン全体の安定化を求めている。業界団体は「政府が積極的な対策を講じなければ、農家の破綻だけでなく、飼料、エタノール、生分解性プラスチックなど関連産業全体が原料調達の壁に直面し、崩壊しかねない」と危機感をあらわにしている。