
タイ政府は2026年8月18日の閣議で、カンボジアと国境を接する7県に防空壕(シェルター)1669カ所と警報システムを整備する事業に、総額4億3300万バーツの予算を投じることを承認した。国境地域の住民の避難体制を、恒久的な設備として整えるのが狙いだ。
住民が身を寄せる場所を「その場に置く」
今回の予算で整備されるのは、コンクリート製の避難用シェルターと、緊急時に住民へ危険を知らせる放送・警報設備である。設置対象は、タイとカンボジアの国境に沿った7県。学校や集落の中心部など、住民がすぐに駆け込める場所への配置が想定されている。
タイ・カンボジア国境地帯では、これまでも緊張が高まるたびに住民が学校や寺院に一時避難する対応が繰り返されてきた。だが、避難先の建物そのものが砲撃や流れ弾に対して十分な防御力を持つとは限らない。今回の措置は、その場しのぎの避難から、設備としての備えへ切り替えるものだ。
1カ所あたり約26万バーツの計算
予算額4億3300万バーツを1669カ所で割ると、1カ所あたりおよそ26万バーツとなる。大規模な地下施設ではなく、既存の建物への補強や、コンパクトな鉄筋コンクリート製シェルターの設置が中心になるとみられる。警報システムの整備費もこの中に含まれる。
タイ側の国境7県には、農業を営む住民が多く暮らす。緊張が高まれば農作業を中断し、遠方へ退避することを迫られる。避難先が近くにあること自体が、生活の継続に直結する。
国境政策の一部として
タイ政府は同じ閣議で、国境地域に関連する複数の案件を処理している。閣僚レベルの人事や、東部経済回廊への農業用水供給を目的としたクロンポール貯水池の拡張事業なども併せて承認された。
国境の安全対策は、タイの国内政治においても敏感なテーマだ。予算を組んで施設を整えることは、政府として国境地域の住民を守る姿勢を示す意味を持つ。一方で、1669カ所という数字が実際にどの程度の速さで形になるのかは、今後の執行状況を見る必要がある。
タイ東北部から東部にかけての国境沿いは、日本人旅行者が訪れる機会の少ない地域だが、遺跡や自然を目当てに足を延ばす人もいる。渡航を検討する場合は、外務省の海外安全情報を確認しておきたい。