
冠水した道路を、セメント用バケツに乗ってバイクに引かれて走り抜ける。その一部始終を撮影した動画がTikTokで220万回以上再生され、投稿から一夜にして「悪ふざけ」は警察沙汰になった。舞台はバンコク・ドンムアン区、9月29日の出来事だ。
遊び心から始まった悪ふざけ
関係者は22歳から23歳の男性4人。テートラッチャン45通り付近に集まった彼らは、ちょうど大雨で冠水していた道路を見て遊び心を起こした。セメント用バケツにアヌチット容疑者(22)が乗り込み、サラワット容疑者(22)がバイクでこれを牽引。アーナン容疑者(23)がバイクを運転しながら並走し、アムポン容疑者(22)がその様子をスマートフォンで撮影した。
冠水した通りをわずか1周しただけの短い「パフォーマンス」だったが、撮影された映像はTikTokアカウント「BALL」にアップロードされるとまたたく間に拡散。再生回数は220万回を超え、洪水に苦しむバンコク市民の間で賛否両論を呼んだ。
「不快にさせた」と謝罪
動画の拡散を受け、ドンムアン警察は4人を呼び出して事情聴取を実施した。4人は「人々に不快感を与えた」ことを認め、今後このようなことは二度としないと謝罪したという。警察は威力業務妨害罪などの適用を視野に、立件の手続きを進める方針とみられる。
洪水で移動もままならない住民が大勢いるなか、セメント用バケツを牽引しての走行シーンは、一部では不謹慎だとの反応を招いた一方、TikTok上ではスリル満点の映像として拡散が続いた側面もある。バンコクでは道路冠水のさなか、こうした洪水便乗系の動画がたびたび物議を醸しており、当局は同種の行為への取り締まりを強化する構えを見せている。
洪水下のモラルが問われる
大雨による道路の冠水が続くバンコクでは、住宅への浸水や交通の麻痺で疲弊する住民が少なくない。そうしたさなかに撮影された遊び半分の危険な走行映像は、220万回という再生数の大きさゆえに、洪水対応をめぐる市民感情の温度差を浮き彫りにした形だ。警察の事情聴取を受けた4人が今後、実際にどのような処分を受けるのか、続報が注目される。
「バズり」がもたらすリスク
タイでは近年、TikTokなどのショート動画で再生数を稼ぐことを目的とした過激な投稿が社会問題化しており、洪水や事故現場を舞台にした「映える」動画がたびたび物議を醸してきた。今回のケースでも、動画が拡散した背景には、冠水した道路という非日常の光景をスリルとして消費する視聴者側の需要があったことは否めない。
専門家からは、こうした動画配信が模倣行為を誘発し、実際の交通事故や更なるトラブルにつながりかねないとの懸念も出ている。当局が威力業務妨害罪などでの立件を視野に入れているのも、単なる悪ふざけでは済まされない社会的影響の大きさを重く見ているためとみられる。バンコクの洪水がなお収束していないなか、SNS上での「モラルなき拡散」にどう歯止めをかけるかは、行政にとって新たな課題として浮上している。