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「洪水でストレス溜まった」➖バンコクの留置場から容疑者が脱走し御用

「食事を買ってきてほしい」。その一言が、警察官の一瞬の隙を生んだ。バンコク・スティサーン警察署の留置場から、窃盗容疑で勾留されていた男が脱走する事件が起きた。男は逃走先でタクシーに乗り込み、まんまと姿をくらませていた。

脱走したのは夜間窃盗の容疑で逮捕状が出ていたプリンヤー容疑者(35)、通称「ノック」。9月30日午前9時半ごろ、留置場を担当していた警察官に「食事を買ってきてほしい」と頼み、警察官が席を外したわずかな隙に、留置室の鉄扉を足で蹴り破って逃走した。

新築の留置場、扉の接合部に落とし穴

この留置場は比較的新しく建設されたばかりだったが、皮肉にも鉄製の扉の接合部分の施工が甘く、強い衝撃に耐えられなかったことが脱走を許す結果となった。警察長官は事態を重く見て、担当していたエークサック・プロムスク副巡査部長を含む当番警察官について、15日以内に経緯を調べて報告するよう調査委員会に命じた。

容疑者を管理していたはずの警察官がその場を離れていたという一点こそが、今回の警備体制の甘さを象徴している。

防犯カメラの映像が決め手に

脱走後、プリンヤー容疑者はタクシーを拾ってラムイントラ77通りで下車。その後の足取りは一時途絶えたが、警察は周辺の防犯カメラ映像を一台ずつ丹念に確認し、立ち寄り先を割り出していった。

そして1日午後6時、クーボン2-1通りにある貸家で身柄を確保した。逮捕時、容疑者はおとなしく投降したという。

取り調べに対し容疑者は「水害のせいでストレスを感じていた」と、脱走の動機について供述した。バンコク各地が洪水対応に追われる中での自分本位な言い訳に、捜査関係者の間でも驚きの声が上がったという。

容疑者は改めて窃盗容疑に加え、公務執行妨害や逃走の容疑でも追送検される見通し。わずか1日半の「自由」の代償は、決して軽くはなさそうだ。

署内では「まさかこの新しい留置場で」の声

署内では、完成したばかりの留置場からの脱走に驚きの声が広がっているという。警察当局は再発防止のため、管内の留置施設の扉や設備点検を急きょ実施する方針も示した。バンコクでは洪水対応に人員が割かれる中で警備態勢の手薄さが浮き彫りになった格好で、同様の事案が他署でも起きないか、警戒を強める動きが出ている。

容疑者の「水害ストレス」という供述の真偽はともかく、未曽有の洪水がもたらす社会の混乱が、思わぬところにまで影を落としている実態を物語る一件となった。

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