ホテルまで自ら被害者を迎えに行き、包丁とのこぎり、ゴミ袋を買いそろえていた――。タイ南部スラータニー県のリゾート島コパンガンで起きたコロンビア人美容外科医殺害・遺体切断事件で、控訴審のプーケット第8控訴裁判所は9月25日、殺人罪などに問われたスペイン人男性被告に対し、一審の終身刑判決を支持する判決を言い渡した。
被告はダニエル・サンチョ・ブロンチャロ被告。シェフとして働いていた人物で、著名俳優の息子であることでも知られる。被害者はコロンビア人美容外科医エドウィン・アリエタ・アルテアガさん。裁判所は「被告は事前に凶器やのこぎり、ゴミ袋を準備しており、計画性が認められる」と指摘した。
迎えに行った先で凶行
裁判記録によると、被害者がコパンガン島に到着した際、被告は自ら予約していたホテルまで出向いて出迎えた。その後、宿泊先で被害者の頭部を浴槽の縁に打ち付けて死亡させ、遺体を切断して各所に遺棄したとされる。裁判所は「被害者を島に呼び寄せた経緯そのものに計画性がうかがえる」との判断を示した。
賠償442万バーツ、双方の控訴退ける
控訴審判決では、被告に対し遺族へ442万4000バーツの賠償を命じた一審判決も維持された。検察側・弁護側双方が量刑を巡って控訴していたが、裁判所はいずれの主張も退け、一審判決の内容をそのまま支持する形となった。
この事件は発生当初からタイ国内外で大きく報じられ、SNS上では判決後も「ようやく決着がついた」「計画的だったことが改めて認定された意味は大きい」「遺族の悲しみが少しでも癒えてほしい」といった趣旨の投稿が相次いだ。
リゾート島の闇、教訓は生きるか
コパンガン島は満月パーティーで知られる人気の観光地だが、今回の事件は外国人観光客同士のトラブルが凶悪事件に発展した例として、島の安全管理のあり方にも一石を投じた。判決確定により事件は法的な決着を見たが、島を訪れる観光客の間では今なお事件の記憶が語り継がれている。
包丁とのこぎりを買いそろえた時点で、この旅の結末はすでに決まっていたのかもしれない。
一審は死刑、控訴審で終身刑に
事件発生は2023年8月2日にさかのぼる。一審のサムイ地方裁判所は当初、計画性の高さを重く見て死刑判決を言い渡したが、被告が捜査段階から一貫して事実関係を認め、遺体の発見に協力する供述をしたことなどが酌量され、量刑は終身刑に減刑された経緯がある。今回の控訴審判決は、この一審の判断枠組みをそのまま踏襲した形だ。
被害者の家族はこれまでタイ国内外のメディアを通じて「息子の死の真相を明らかにしてほしい」と繰り返し訴えてきた。判決確定を受け、遺族の代理人は「長い裁判にひとまず区切りがついた」といった趣旨のコメントを残したと伝えられている。一方、被告側は今回の判決についてさらに上級審に不服を申し立てるかどうか、今のところ明らかにしていない。地元弁護士の間では、最高裁への上告が行われた場合でも、控訴審が積み上げた事実認定が覆る可能性は低いとの見方が優勢だ。