
助けに来たはずの救助隊員に、銃口が向けられた。タイ中部ノンタブリ県パークレット郡の水辺で19日夜、溺れた男性を救助していたレスキュー隊員が、現場に居合わせた男から拳銃で威嚇される事件が起きた。
タイメディアによると、現場はノンタブリ県パークレット郡ターイット地区のソイ・ターイット1。地元のレスキュー団体の救助隊員カンさん(25)は19日午後10時32分、水たまりで人が倒れているとの通報を受けて現場に駆けつけた。
「俺は酔っていて持ち上げられない」
現場には、動かなくなった被害者とともに、その交際相手の女性と、被害者の友人だという男がいた。カンさんは1人では被害者を担架に乗せられず、その場にいた友人の男に手伝いを求めた。男は「酔っていて持ち上げられない」と断ったうえ、カンさんに向かって罵声を浴びせ、「来るのが遅すぎる」と言わんばかりの態度を示したという。男はその場を離れたが、カンさんと同僚の女性隊員は2人で被害者を担架に乗せた。
すると男が再び戻ってきて、今度は拳銃を手にしていた。男はカンさんの顔に銃口を突きつけ、空に向けて1発発砲した後、再びカンさんに銃を向けた。被害者の交際相手の女性が止めようとしたが、男は大声で怒鳴り続けた。車内で意識を取り戻した被害者が「息ができない」と訴えたところで、男はようやく隊員らに「行け」と手で合図し、現場を離れさせたという。
「こんな経験は初めてだ」
カンさんはこの後、チャイプルック警察署に被害を届け出た。「最後まで事をはっきりさせたい」と話し、「こんな状況に遭遇したのは初めてで、正直怖かった」と心境を語った。現場では、カンさんのヘルメットに取り付けられたカメラが一連のやりとりを記録していたとみられる。
ボランティア救助隊が支える現場対応
タイでは交通事故や溺水、急病などの現場に、警察や救急隊よりも先に地元のボランティア救助団体が駆けつけることが多い。バンコク近郊を含め各地にこうした救助団体の拠点があり、無線で通報を受けると最寄りの隊員が自ら車やバイクで現場に向かう仕組みになっている。今回出動したノンタブリ県のレスキュー団体もこうした地元密着型の団体の一つで、カンさんのように若い隊員が深夜の通報にも対応している。
タイ国内では、こうした救急・レスキュー隊員が出動先で暴言や威嚇を受ける事例がたびたび報告されており、今回のケースも現場の対応の遅さへの不満が引き金になったとみられるが、銃を持ち出すまでの行為は看過できないとして、警察が男の身元特定を進めている。被害者と交際相手の女性の素性や、被害者のその後の容態については伝えられていない。地元では、無償で命がけの対応をするボランティア隊員への感謝の声と、現場での暴力行為への批判の声が今後高まることも予想される。