国際格付け会社フィッチ・レーティングスは、タイの銀行システムが今後1〜2年にわたり3〜4%台という高い不良債権比率(NPL)に直面し続けると警告した。この水準はアジア太平洋地域の他国と比べても高く、タイが地域内で最も厳しい状況に置かれていることを示しているという。
フィッチが指摘する主な背景は、タイの景気回復の遅さだ。新型コロナ禍後の回復ペースが周辺国より鈍く、新規の不良債権が年2%以上のペースで流入し続けている。これまで債務再編などの対応が進められてきたものの、資産管理会社(AMC)による不良債権の買い取りペースは鈍化しており、処理が一段と難しくなっているとフィッチは分析する。
中小企業への融資、一段と慎重に
こうした状況を受け、タイの商業銀行各行はリスク許容度を下げ、大口顧客や財務体質の良い優良企業向けの融資を優先する傾向を強めている。一方で中小企業(SME)やマイクロファイナンス向けの融資は抑制され、今年の与信成長率は2〜3%程度という低水準にとどまる見通しだ。中小企業の資金繰りには逆風となりそうだ。
ただしフィッチは、タイの銀行セクター全体については「資本基盤は堅固で、引当金も十分」との見方を示す。総資産利益率(ROA)はおよそ2%の水準で安定しており、1997年のアジア通貨危機のような体系的な金融危機には直面していないとも強調している。
国の信用見通しは「安定的」に格上げ
一方でフィッチは、タイの外貨建て長期信用格付け(BBB+)の見通しを「ネガティブ」から「安定的」に引き上げた。AI関連投資ブーム、観光需要の回復、そして政治情勢の安定化が、見通し改善の主な評価要因になったという。銀行の不良債権問題という逆風がある一方で、タイ経済全体としてはなお底堅さを評価されている格好だ。