タイのアヌティン・チャーンウィーラクーン首相(内務相を兼任)は10月19日、政府庁舎で外国人に代わって土地を保有する「ノミニー(名義貸し)」の取り締まり作戦の開始を発表した。首相は、名義人の背後で実際に利益を支配している人物まで調査を及ぼすよう指示し、「影響力のある人物であっても恐れる必要はない」との趣旨を強調した。一方で、適法に投資する外国企業は引き続き歓迎するとの立場も示している。
高リスク案件は12月までに調査完了
首相は、リスクが高いとみなされる案件の調査を2026年12月までに完了させるよう指示した。担当は主に土地局と各県知事で、優先順位・担当者・手順・期限を明確にすることが求められている。具体的な指示は3点で、(1)高リスク案件の迅速な調査と関係機関への情報連携、(2)違法な土地保有が確認された場合の強制売却の推進と名義人の入れ替わり防止、(3)登記前後の監視や通報窓口の整備といった長期的な防止体制の構築、となっている。
首相は、違法な土地保有の強制売却が進めば、100億バーツ(約470億円)を超える資金が国庫に戻る可能性があるとの見通しも示した。
タイで不動産を持つ外国人・投資家への影響
タイでは法律上、外国人が直接所有できる不動産はコンドミニアムの専有部分(建物全体の49%まで)などに限られており、土地の所有は原則としてタイ人や一定条件を満たすタイ法人に限られる。今回の作戦は、こうした規制を回避する目的でタイ人名義の法人を使って土地やコンドミニアムを実質的に外国人が保有する仕組みを標的にしたものだ。
対象となる地域は、バンコク周辺や、プーケット・チェンマイ・クラビなど外国人に人気の観光地を含む16県に集中しているとされ、合法的な手続きで不動産を保有・賃借している外国人には直接の影響はないとみられるが、タイでの不動産取得を検討する際には、保有形態が法律上適切かどうかを改めて確認しておくことが重要になりそうだ。
ノミニー問題の広がり
タイでは今年に入り、ホアヒンやサムイ島などの観光地でノミニー絡みの摘発が相次いで報じられており、外国人が関与する法人の土地保有統計の精査も進められてきた。今回の首相の発表は、これまで個別に進められてきた取り締まりを、全国規模の作戦として統括する位置づけといえる。