タイの宿泊業界で、廃業するホテルや民泊が目立って増えている。タイ商務省事業開発局(DBD)のデータによると、2026年1月から9月までの9カ月間に新たに登録された宿泊事業は779件にとどまり、一方で廃業(登録抹消)は148件に達した。これは前年同期と比べて42%の増加だという。日本から旅行者を送り出す側としても、現地の宿泊施設の経営が不安定になれば、予約した宿が突然営業を取りやめるといったトラブルにつながりかねず、注意しておきたい動きだ。
チェンマイなど観光地でも苦境
チェンマイ県観光業協会のスパミット・キッチャピパット会長は、閉業には恒久的なものと、観光の閑散期に合わせた一時休業の両方があると説明している。あわせて、従来は団体旅行が中心だった中国人観光客が、少人数での個人旅行に移行している変化も指摘した。タイ小規模ホステル・宿泊施設協会のナリー・スネータ会長も、例年なら10月末は観光シーズンの始まりにあたる時期であるにもかかわらず、多くのホステルが閑散としている状況を明らかにした。バンコクなど主要都市の客室稼働率は、例年より30~40%ほど低下しているという。
背景には外国人観光客の伸び悩みとコスト増
廃業が増えている背景には、新型コロナ流行前の水準まで外国人観光客数が回復していないことがある。宿泊施設の数自体は増加傾向にあり、限られた需要を奪い合う形で競争が激しくなっている。人件費は宿泊施設の総コストの25~30%を占め、コスト増も経営を圧迫する要因だ。航空券価格の上昇も重なり、旅行者が旅行を控えたり、タイより費用の安いベトナムなど他国を選んだりする動きも出ているという。タイのホテル・宿泊施設は全国で約1万5000軒、従業員は約43万人にのぼり、その98%が小規模施設とされる。カシコン研究所は、2027年も地政学的な緊張が観光回復の重荷になり続けるとみて、外国人観光客数は約3100万~3300万人にとどまると予測している。
予約時は施設の実態を見極めたい
日本人旅行者にとっては、こうした状況だからこそ、有名な大型チェーンホテルだけでなく、価格の安い小規模宿泊施設を選ぶ際には運営状況に注意を払いたい。予約サイトでの最新の口コミや、直前のキャンセルポリシーを確認しておくと、万一の休業・閉業リスクに備えやすくなる。