
記録的な洪水被害が続くタイで、保険監督委員会(OIC)が被災者の生活再建を後押しする緊急支払いスキームを打ち出した。9月28日に発表された内容によると、被害が明確な契約者には最短7日以内に保険金を支払うとしている。
具体的には、住宅火災保険の加入者に2万バーツを即時支払い、洪水特約が付いている場合はさらに1万バーツを上乗せする。商業施設向けの財物保険(IAR)は3万バーツ、マイクロ保険の加入者にも1万バーツを支給する方針だ。被害が明白なケースでは、申請から7日以内の承認を目指すという。
保険料の支払い猶予も拡充される。自動車保険は最大180日、一般保険は90日、生命保険は60日、それぞれ支払い期限を延長できるとした。
注目されるのは、電気自動車(EV)に関する新たな取り扱い基準だ。冠水したEVについては、まずバッテリーの安全性評価を実施し、回復不能と判断された場合は自動車保険の「全損」として扱うとしている。近年タイで急速に普及したEVだけに、バッテリー損傷による発火など二次被害のリスクが懸念されており、今回の基準は業界にとっても重要な指針となりそうだ。
OICは相談窓口として24時間対応のホットライン「1186」と、LINE公式アカウント「@OICCONNECT」を案内している。バンコクをはじめとする被災地では、住宅や車両の修繕・買い替え費用がかさむ中、保険金の迅速な支払いが生活再建の鍵を握る。今回の措置が、実際にどれだけ迅速な支払いにつながるか、被災者からの注目が集まっている。
タイでは近年、洪水などの自然災害が頻発する一方、保険金の支払いが遅れて被災者の生活再建が滞るケースがたびたび問題視されてきた。今回のスキームでは審査を簡素化し、被害状況が写真などで明確に確認できる案件については迅速審査を優先する運用になるとみられる。保険業界にとっても、大量の請求案件をいかに早く処理できるかが、信頼回復の試金石となりそうだ。
EVの全損判定基準の明確化も、タイの自動車保険業界にとって大きな一歩となる。これまで水没した電気自動車の扱いについては明確な統一基準がなく、修理可能かどうかの判断が保険会社ごとにばらつくケースもあった。バッテリーの安全性を最優先した今回の基準は、今後同様の洪水が発生した際の標準的な対応指針になる可能性がある。