記録的な豪雨と河川の増水に見舞われてきたバンコク都で、洪水被害からの回復の兆しが見え始めた。バンコク都庁は、全50区のうち38区に発令していた洪水被災地域の指定について、21区で解除したと発表した。一方で、残る29区では依然として警戒が続いている。
半分近い区で「危機」脱するも
バンコク都は先に、都内38区・118行政区(カウェーン)を対象に洪水被災地域の指定を行い、被災者向けの支援措置を進めてきた。今回、水位の低下が確認された21区について指定を解除したことで、対象区域はほぼ半分にまで縮小したことになる。
解除された区域では、道路の通行再開や住宅への立ち入りが順次可能になるとみられるが、浸水によって傷んだ家屋や設備の復旧には相応の時間がかかる見通しだ。一方、指定が継続する29区では、依然として排水が追いつかず、住民の生活に支障が出ている地域が多い。
上流ダムの放流が続く限り
バンコク都内の水位は、単に都内の降雨量だけでなく、上流に位置するダム群からの放流量にも大きく左右される。中部タイの複数のダムでは貯水率が高い水準で推移しており、下流への放流が今後も続く見通しであることから、都庁は洪水指定地域がさらに縮小するかどうかは今後の上流の水管理次第との立場を崩していない。
都庁は各区の水防団体や消防、ボランティアと連携し、指定継続中の29区を中心に排水ポンプの増設や土のうの配布を継続する方針だ。特に低地に位置する区や、運河沿いの住宅密集地では、再び水位が上昇するリスクへの警戒が呼びかけられている。
「日常」までの距離
洪水被災地域の指定解除は、あくまで行政上の区分の見直しに過ぎず、解除された区の住民全員がただちに日常を取り戻せるわけではない。浸水した住宅の消毒や家財の処分、感染症対策など、洪水後に待ち受ける作業は多岐にわたる。バンコク都が発表した21区解除というニュースは、長期化する洪水禍のなかでようやく見えた小さな前進である一方、残る29区の住民にとっては、まだ出口の見えないトンネルの途中に過ぎない。