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タイの体外受精は1回50万バーツ、患者の8〜9割が外国人という不妊治療ハブの内側

晩婚化という世界的な潮流が、タイの医療産業に予想外の追い風を送り込んでいる。バンコクを中心とするタイの生殖補助医療(ART)市場は、いまや患者の8〜9割を外国人が占める「アジアの不妊治療ハブ」に育った。体外受精(IVF)関連だけで、年間75億バーツの収益を生んでいる。

2026年8月22日、タイの経済紙クルンテープ・トゥラキットが市場の現状を伝えた。

ドバイの70万バーツに対し、タイは50万バーツ

タイでIVFを受ける場合の費用は、遺伝子検査を含めておよそ50万バーツ。同じ治療をドバイで受けると約70万バーツかかるとされ、価格差が患者を引き寄せている。

成功率も競争力の源だ。タイ全国の平均は48〜50%とされるが、上位のクリニックでは78〜80%を掲げるところもある。中東は50〜60%、中国やインドは30〜40%とされ、費用と成功率の両面でタイに分がある構図になっている。

タイの医療ツーリズム全体の市場規模は、2023年時点でおよそ60億ドル。年間300万人以上が治療を目的にタイを訪れている。

患者の国籍が入れ替わった

この分野で存在感を強めているのが、2018年設立で2024年にタイ証券取引所へ上場したインスパイアIVFだ。同社の患者構成の変化は、市場そのものの変化を映している。

新型コロナ流行前は中国人が50%以上を占めていたが、現在はインド人が40〜50%で首位。中東GCC諸国やCLMV(カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム)からの患者も増えている。

同社のチャッチャイ・チュルジラポーン会長は、経営上の要点を「特定の医師への依存を避けること」だと語る。

「独立した医学チーム体制を組むことで、組織としての安定性を確保しています」

属人的な名医頼みではなく、チームで再現性のある治療を提供する。医療ツーリズムを産業として成立させるための、現実的な設計思想である。

ドバイに拠点、ウェルネスへも拡張

同社は2024年4月、ドバイのフリーゾーンに紹介オフィスを開設し、同年9月から本格的なサービスを始めた。さらに泌尿器科専門クリニックへの24%出資や、2026年末を目標としたウェルネスクリニックの開設など、周辺領域への広がりも進めている。

世界のIVF市場は2020年から2027年にかけて年平均16.4%で成長し、アジア太平洋地域は2027年に全体の49%、約56億ドル規模に達すると見込まれている。医療ツーリズムを目的とした生殖補助医療市場全体では、2027年に約336億ドルという予測もある。

タイが選ばれる理由は価格だけではない

経験豊富な医師、整った検査設備、競争力のある価格、そしてホスピタリティ。タイがアジアのIVF中心地となった理由として挙げられるのは、この4点に集約される。治療のために数週間滞在する患者にとって、滞在そのものの快適さは無視できない要素だ。

裏を返せば、価格だけで並ぶ競合が現れれば、優位は簡単に崩れる。タイの医療ツーリズムが次に問われるのは、安さではなく、通い続けたいと思わせる質のほうだろう。

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